清水もつカレー総研事務局・清水ブランド大作戦事務局

2009年11月26日

自動車の社会的費用

23日月曜日の静岡新聞社説に「高齢者の生活基盤守れ 買い物難民」があった。
「交通手段を持たない高齢者が買い物に困るいわゆる買い物難民が、山間部だけでなく都市部にも広がっている」との書き出しで始まっている。

夕餉の支度にも困るような事態がまちなかで起こっている。
これすべて、自動車に頼りすぎたせいではないか。

これから高齢者の単独世帯、二人だけの世帯が増えていく。
自動車一台保有していると、月7万円のコストがかかるという。

歩いて生活できるまちづくり、コンパクトシティが謂われるゆえんである。

私たちの移動手段のうち、もっとも基本的なものは歩行、歩くということである。
しかるに歩道もない道路を歩こうとすると、まったく命がけである。
1mと離れていないところを、重量1トンの鉄のかたまりが時速数十キロという速度で脇を通り抜けていく。

これでは安全かつ自由に歩くという権利は奪われている。
他人の自由を侵害しないかぎりにおいて、行動の自由が認められるという基本的な原則が、自動車通行によって破られている。

もし本当に歩行者の権利を確保するための道路を造るなら、歩道と車道は完全に分離され、並木その他によって排気ガス、騒音などの被害を歩行者に与えないようにし、住宅などの建物との間隔も十分あける。
そしてそのような道路を造る費用を自動車利用者に賦課する。

かつて子どもたちの遊び場は街路であった。
学校、家に次ぐ子どもたちの第三の居場所は道であった。
道が自動車通行のための道路として整備されていき、子どもたちの居場所が無くなった。

そして、自動車利用者の利便性に応えた郊外大型店、しかも地域とは縁のない中央資本の総合スーパーの進出により、地域の身近なところにあった商店が消滅し、買い物難民が生まれた。

群馬県渋川市では最寄りの4業種店(食料品、鮮魚店、青果店、精肉店)までの平均距離をはじき出した。それによると、1982年当時は平均395mであった。1990年代に大店法が緩和され市周縁部に大型店が2店舗開店した。1980年代に中心市街地に出店した大型店と合計して大型店数は4店となった。その結果、市内の4業種店舗数は激減。前記10地点から最寄りの4業種店までの平均距離は、524mに延びたという。歩いて暮らせる範囲で食料品を買いにくくなることを、「食料砂漠になる」という。地方都市で確実に、しかも急速に食料砂漠化が進行している。矢作弘 「都市規模の創造的縮小」時代の地域商業」


これらの社会的コストは、自動車の持つその便益性から行政が持つものだろうか。

自分の財布からでるコストを見ていたら、財布以外からでるコスト(地方社会の疲弊、社会の不安定さなど)が巨大なものになっていた。

従来よしとしていたものを、別の視点で考え直すときが来ているのではないでしょうか。


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Posted by クールなお at 18:39│Comments(4)まちづくり
この記事へのコメント
各家に1台車を所有することが当たり前になっていますが、
これだって歴史的にはたかだか30年程度の事でしかないわけで、
車を所有し、
家電を所有し、
土地を買って家をたてて、
なんていう消費社会も大きな転換点を迎えていますよね。
舵を切る方向がなかなか見えて来ませんが、
道具は道具の使命に戻っていただき、
生活の足元を充実していきたいです。

一人一台車を所有して通勤し、その車は全部昼間は寝ているなんて、ものすごい無駄だと思うんですけどね。その何割かでも税金に充てて公共交通を充実させることはできないのでしょうか。
また人間はコミュニティを超えてこんなに移動する必要ないと思うのです。
無駄に移動しすぎです。
いや自戒の念を込めて...(笑)
Posted by sue at 2009年11月27日 00:11
>sueさん
いつもながらのご見識、
>その車は全部昼間は寝ている
無駄ですねぇ。
シェアする仕組みとか、公共交通に移行するのが望ましい。

それにしても自動車所有に対して、優遇しすぎだと思います。
総量規制とか、一人乗りでの都心への乗り入れ料金徴収など、外国の取っている施策を考えた方が、高速道路無料よりずっといいと思います。

化石燃料が人間に人力より数百倍の移動能力を与えてしまいました。
自前の足で移動する自転車はその点いいですね。
Posted by クールなおクールなお at 2009年11月27日 13:12
こんにちは。

「自動車の社会的費用」で検索したらこちらにヒットしました。

実は、日本の地方都市をターゲットとして、西欧の手法を応用したまちづくりに関する本を昨年上梓しました。

(こちらの何番目かです)
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_ss?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%8E%A9%93%AE%8E%D4%82%CC%8E%D0%89%EF%93I%94%EF%97p

大きな図書館には置いてあるようですが、興味をお持ちの方には、きっとなにかお役にたてることがあると自負しておりますので、近くの図書館にも購入希望を出していただいて、ご一瞥を賜る機会があれば幸いと考えております。
Posted by シライ at 2009年12月13日 14:27
>白井さま
コメントありがとうございます。
目次を見させてもらいましたら、興味深いキーワードがならんでいました。

現代は自動車利用者にとって有利な構造になっています。
社会全体がその方向に突き進んできたからです。

その負の部分があまりに大きくなってきました。
読ませていただきます。
Posted by クールなおクールなお at 2009年12月14日 10:20
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自動車の社会的費用
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